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Act Ⅲ Scene 4 : ambush ②

 そう考えるなら、たしかにクリフォードの職業はまさに理に適っている。なのせ賭博クラブは陽が陰りはじめた頃から営業し、太陽が昇る前に閉店するのだから――。  ゴドフリー公爵の言うとおり、もしクリフォードが犯人ならばシャーリーンの仇を討ちたい。違うのなら他を当たらねばならない。それを見極める方法は簡単だ。今までと同じようにクリフォードを見張ればいいだけのこと。――ともすれば、クリフォードの居場所で一番妖しいのは、カルヴィンがクリフォードの屋敷で目覚めた当初に向かった地下。支配人ティム・コナ―に止められた一番奥のあの部屋。あそこがおそらくはクリフォードの主寝室になっているに違いない。そこに黒い柩があるかどうかは不明だが、とにかく、あの部屋を見張ることにしよう。  そう決意したものの、流石に真冬で地下ということも相俟って(すこぶ)る寒い。オーバーコートを着ていてもまるで寒さは凌げない。  足下にある燭台の灯りはすでに消している。カルヴィンは肩を抱き、主寝室と思える部屋に最も近い書斎で一切の明かりを点けず、”The crazy”の主人が現れるのをひたすら待つ。  書斎よりも壁面に取り付けられた照明がある通路の方がまだ明るい。ほんの数センチ開けたドアから通路の明かりが漏れる。カルヴィンは一向に人の来る気配がない通路に目を細める。  時が経つにつれて地下の気温は一気に下がっていく。なんとか体温を保ちたくて、細い躰を丸めていっそう縮こまる。ぶるりとひとつ身震いした。

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