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Act Ⅲ Scene 4 : ambush ③
いったい今は何時だろう。一階の賭博クラブでは紳士たちの談笑する声とヴァイオリンとピアノだろうか、リズミカルな音楽がこの寒々しい地下まで響いている。
もしかすると今夜は、ゴドフリー公爵は動かないつもりなのか。だとすると今夜の張り込みは無駄に終わってしまう。落胆する気持ちと緊張の糸がほんの少し緩まる。念のためにともうしばらく待っていると、軽快な足音が複数聞こえてきた。
足音は二人分だろう、少しずつ近づいてくる。
カルヴィンは息を潜め、通路の様子を窺う。すると聞き覚えのある声が通路じゅうに響く。やって来る足音と共に話し声も大きくなる。
「クリフォード、これは罠だ。奴が堂々と勝負を挑んでくるはずがないだろう?」
ティムの声だ。
彼の声はいつになく慌てているように思える。
「だが、このまま奴と睨み合いを続けていても埒があかないのも事実だ。お望み通り、決着をつけに行く」
「それは、そうだが――しかし今からなんていくら何でも急すぎるだろう?」
「太陽の下で動けない条件は同じ。だったら早急に決着をつけねばならない。これ以上の犠牲者はうんざりだ」
「――わかった。もし二時間経っても戻らない場合は問答無用で迎えに行くよ」
「頼む。この地図が呼び出し状に入っていた。あと、カルヴィンのことだが――」
まさかクリフォードの口から自分の名前が出てくるとは思わず、心臓が大きく跳ねた。
「ああ、心配しなくても無茶なことをしないよう、きちんと見張っておくよ」
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