155 / 275
Act Ⅲ Scene 4 : ambush ⑧
たった一度の攻撃で複数体の悪魔を葬り去る彼の動きは洗練されている。
彼は戦いに慣れているのだろう。強靱な肉体を駆使し、悪魔に怯むことなく蹴散らしていく。その様はまるでダンスでも論舞曲でも踊っているような、鮮やかで無駄のない動きだ。
あまりにもクリフォードに見惚れていたカルヴィンは一体の悪魔が背後に潜んでいることに気づけなかった。
ふと異様な雰囲気を感じて振り返れば、すぐそこにクリフォードが相手をしていた同じ形態の悪魔がいた。頬まで裂けた口は涎が滴り落ち、尖った鋭い牙が覗く。あまりの恐怖に逃げることさえもできず、腰を抜かしてしまう。鋭い刃がカルヴィン目掛けて襲い来る。クリフォードとゴドフリーに自分の存在を知られてしまうという事実さえ忘れ、悲鳴を上げた。
このまま自分は死んでしまうのだろうか。死を覚悟して目を閉ざす。ずぶりと肉が引き裂かれる耳障りな音がカルヴィンを襲った。
しかしおかしなことに痛みは一向に襲ってくる気配がない。何事かと目を瞬けば、目の前には長身の男性がいるではないか。
漆黒のジュストコールに身を包む彼が、悪魔の刃の餌食になっていた。悪魔の鋭利な刃が彼の肩口に突き刺さっている。
「クリフォード!」
なんということだろう。
カルヴィンを庇ったのはゴドフリー公爵ではなく、クリフォードだったのだ。カルヴィンは自分が目にした光景が信じられず、いくらか瞬きをする。
ともだちにシェアしよう!