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Act Ⅲ Scene 5 : 血に飢えた悪魔。 ⑥
できるだけ深手を負っているクリフォードの躰に衝撃を与えないよう、しっかりと巻き付けられている鎖を慎重に解いていく。
ティムの言っていることはなんとなくわかる。ヴァンパイアにとって血を失うことは理性も失う怪物になるかもしれない。
もし、ティムの言うことが真実なら、今の彼にとって自分は獲物にすぎない。もしかするとシャーリーンのように殺されるかもしれない。
鎖を解いてからの不安もある。しかし、そもそもクリフォードが大怪我を負ってしまったのは自分を庇ったからだ。しかも、毒を浴びたクリフォードがこんな数時間の輸血で完治するかもわからない。もし、傷が治らなければ――。死んでしまったなら、それは自分が殺したも同然だ。今のカルヴィンにとって死の不安よりも罪悪感の方が大きい。
鎖からクリフォードの顔に視線を戻せば、今も尚、玉のような汗を拭き出し続けている。彼の額に手の甲をそっと乗せた。
高熱だ。深手による傷から出た熱なのか、それとも毒の作用なのかはわからないが体内に廻る血液が沸騰しそうだ。
やはりこんなに高熱を出して苦しんでいるクリフォードを放っては置けない。
手が震えて鎖が上手く解けない。それでも、カルヴィンは苦しんでいる彼を助けたいと思った。
途中で苦しそうな声が放たれる。そのたびに鎖を外す手を中断させ、新たに濡らしたタオルで毛穴から吹き出たじっとりとした脂汗を拭い取る。
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