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Act Ⅲ Scene 4 : ambush ⑬
ゴドフリーの言うとおり、カルヴィンの首筋には縦に並んだふたつの小さな傷がある。首筋のこれはここ数日のうちにできた傷だった。てっきり虫に噛まれたものと思っていたが、まさかクリフォードの仕業だとは思いもしなかった。
たしかに、小さな傷痕は彼の屋敷の前で倒れた後からあった気がする。
「ぼくの、血を吸ったの……?」
目の前には真の敵がいるにもかかわらず傷痕から熱が生まれ、躰中が火照りはじめていく。
――なぜだろう。シャーリーンのように吸血されたのに、クリフォードの仕業だとわかれば恐怖心はない。それどころかまるでクリフォードに愛撫されたかのような感覚にさえ陥ってしまう。
カルヴィンは思わず呻いてしまいそうになって慌てて唇を引き結んだ。
なぜ、クリフォードは自分の血を吸ったのだろう。腹を空かせていたのか、もしくは他の理由があったのか。けれども彼を責める気持ちはこれっぽっちも湧かなかった。
それよりもずっと気になる疑問が生まれている。
なにせ自分はクリフォードに吸血されたのだ。ならば自分もヴァンパイアになってしまうのだろか。
たしかヴァンパイアは陽の光を浴びれば灰と化してしまうとオカルト雑誌なんかで読んだ記憶がある。しかし今のところ日中、出歩けている。それはゴドフリーも同じだった。
ならばヴァンパイアが太陽に弱いというのは仮説なのか。それとも淫魔というヴァンパイアが特殊なのか。
自分もまた、クリフォードのようにヴァンパイアとなってしまうのだろうか。
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