162 / 275

Act Ⅲ Scene 4 : ambush ⑮

 両親は肺を煩いこの世を去り、さらにはゴドフリーの手にかかりシャーリーンを失った。そして今度はシャーリーンの命を惜しんでくれるクリフォードに命の危機が迫っている。これ以上、自分の知っている人がこの世を去ってしまうことは、カルヴィンにとって堪えられなかった。 「嫌だ! もうこれ以上、誰かが死ぬ姿を見たくない!」  カルヴィンは首を振り、クリフォードの腕にしがみついた。 「カルヴィン!」  いやいやを繰り返すカルヴィンの目に涙が光る。言うことを聞けとカルヴィンを咎める。  カルヴィンはクリフォードに必死に食らいつき、必死に抵抗した。 「カルヴィンがどう動こうと無駄なこと。結果は見えている。これで終わりにしようじゃないか。ウォルター伯爵」  ゴドフリーが一歩、一歩、こちらに向かって歩いてくる。  自分の所為でクリフォードが命を堕としかけている。  シャーリーンの仇さえも討てず、このままみすみすクリフォードを死なせてしまうなんて……!  クリフォードの躰を支えるようにして後退るカルヴィンは唇を噛みしめた。  ――その時だ。 「クリフォード……」  聞き覚えのある声が遠くから聞こえてきた。 「――また邪魔か。まあいい、次に会った時にはカルヴィンをもらい受けるとしよう。その時はクリフォード、毒に支配された君の命はもうないがね……」  ゴドフリーは近づいてくる声から逃げるようにしてひとつ舌打ちをすると闇夜に消えていく……。

ともだちにシェアしよう!