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Act Ⅲ Scene 5 : 血に飢えた悪魔。 ④

「そうなれば、ゴドフリーはますます人々の英雄として名を馳せる。そして人々を襲ったクリフォードは途方に暮れ、罪悪感に駆られながらこの世を去るだろう」  ゴドフリーの立場は安定し、彼にとって有利になる。結果、シャーリーンのように不慮の死を迎える人々が増えていくのだ……。 「そんなこと、させない……」  カルヴィンは唇を噛みしめた。  もう誰も悲しむ顔を見たくない。  罰せられるのはクリフォードではなく、天使の仮面を被った悪魔のゴドフリーの方だ。 「そうさ。だから大丈夫。傷が癒えたクリフォードは時期に目を覚ます。これでいいんだよ。さあ、屋敷に戻ろう」  ティムはカルヴィンの肩を叩き、この屋敷から出るよう促す。  しかしカルヴィンは大きく首を横に振った。 「クリフォードの傍にいます」  静かに、きっぱりと言い放つ。 「危険すぎる! 言っただろう? 血を失った今のクリフォードに自我はない。おそらく目を覚ませば誰彼構わず襲うだろう。君に危険が及ぶんだ!」  そんなカルヴィンを前にして、今度はティムが狼狽える番だった。重傷を負ったクリフォードがいるにもかかわらず、彼は大きな身振り手振りで愚かな考えは止めろとカルヴィンに言い聞かせる。 「でも! ぼくのせいでクリフォードは傷つきました。だから看病します」 「カルヴィン!」  ティムがどんなに説得しても無駄だ。カルヴィンは意思を曲げない。  昔から一度決めたことは梃子でも動かない頑なな意思を持っていた。

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