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Act Ⅲ Scene 5 : 血に飢えた悪魔。 ⑧

 彼の腕は強く、そしてカルヴィンはあまりにも貧弱だった。細い枯れ枝のような貧相な躰は意図も容易く拘束され、クリフォードによってベッドに縛り付けられる。  ぎょろりと覗く闇の目が華奢な肢体を見下ろす。  そしてカルヴィンを獲物として見たのだろう、クリフォードは大きな口を開けた。鋭い犬歯の先から唾液が滴り落ち、線を引いているのが見えた。  白目は血走り、地響きのような呻り声を上げている。  そこにはティムが忠告していたとおり、青年実業家クリフォード・ウォルターではなく化け物がいるだけだった。  考えが甘かったのだ。頭のどこかでクリフォードは自我を失わないかもしれないと期待していた自分がいた。  後悔しても今さらだ。自分の考えが浅はかだったとカルヴィンは目を閉ざし、歯を食いしばる。荒々しい吐息が首筋に触れた。――瞬間、鋭い痛みが走る。  恐ろしい痛みに耐えきれず、カルヴィンは声を上げて抵抗する。  それでもやはり彼の力は強い。必死な抵抗さえもものともせず、カルヴィンがどんなに足掻こうとも、意図も簡単に取り押さえられてしまう。  強い痛みだ。まるで心臓から無理矢理血液を逆流させられるような、肉を引き千切られるような、そんな激しい強烈な痛みだった。  けれどもこの強烈な痛みは長く続かなかった。  次第に痛みが消えていく……。あろうことか躰の芯から熱が生まれたのをカルヴィンは感じ取ったのだ。

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