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Act Ⅲ Scene 5 : 血に飢えた悪魔。 ⑨

 一度熱を感じてしまえば痛みは麻痺していく。  するとどうしたことだろう。唇から上がる声は悲鳴ではなくなって、甘い声が漏れはじめる。  カルヴィンの異変に気づいたクリフォードはその声に導かれるようにして首筋に舌を這わせていく……。  未だ高熱を出しているクリフォードの躰は熱い。けれどもその熱が、かえってカルヴィンを煽る。  やがてカルヴィンは甘い声で鳴きながら従順に躰を開き、自らの足を彼の腰に絡めた。すると骨張った指が胸板に乗っている飾りをなぞった。  そこは男にとって意味の為さない箇所だ。当然何を感じるわけでもないと思っていた。  それなのに――クリフォードに飾りをなぞられ、甘い痺れが生まれている。  カルヴィンの放つ声は次第に大きくなり、小さな喘ぎはやがて嬌声へと変化する。   同性はもちろん、異性との関係すら持ったことのないカルヴィンにはもちろんよくは知らないが、これはまるで情交のようだと思った。  そしてこの快楽はカルヴィンにとって強すぎた。 「クリフォード、クリフォード」  本当にこれは自分の声なのか。カルヴィンは朦朧とする意識の中、まるで甘えるような声を上げてすすり泣く。  両足の間にある欲望は反り上がっている。卑猥な声を漏らしてしまう。  身をくねらせ、クリフォードの下で喘ぐ自分はまるで彼を誘惑しているようだ。首筋に牙が刺さる。血を抜き取られて死んでしまうかもしれない怖さは、けれども熱に浮かされる方が勝つ。カルヴィンは身をくねらせ、クリフォードの下で喘ぎ続ける。

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