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Act Ⅲ Scene 12 : 気勢。①

 次にカルヴィンを眠りから呼び覚ましたのはやはりクリフォードだった。時刻は何時頃だろう。とにかく夜通しクリフォードに求められ、抱かれた躰はまだ本調子ではない。恋をした男性に求められたのだ。それは嬉しくもあるが、今に至っては少し困る。  それというのも、クリフォードが声を荒げているからだ。彼はいったい何に対して怒っているのか。そして何を話しているのか。疲労しているこの状況下では理解できない。  けれどもまだはっきりと脳が覚醒していない状態でも、怒声の対象がティムだろうことは容易に予想できた。なにせクリフォードがこの屋敷に戻っている事を知っているのは屋敷の住人ではティム以外いないのだから……。  それにしてもクリフォードはいったいどうしたのだろう。話の内容を汲み取れないカルヴィンにはさっぱりわからない。布団にくるまっていた顔をそっと持ち上げて目を開ければ、目がくらむほどの室内の明るい照明が飛び込んできた。 「クリフォード落ち着け、眠っているカルヴィンもそうだが屋敷の連中が起きるだろう? 彼らには今はまだ君の存在を知られるのはまずい」 「落ち着けだと? ああ、落ち着けるものならそうしたいよ!!」  ティムはいきり立つクリフォードを宥めようとしているものの、それはまったくの逆効果らしく、彼はますます怒りを露わにする。大股で暖炉から壁へと左右行ったり来たりを繰り返し、頭を掻きむしっている。

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