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Act Ⅲ Scene 6 : 美しいひと。 ③

――っつ!」  カルヴィンは肌に触れていた指が火傷をするかのような錯覚をおぼえて慌てて手を引っ込めた。  澄み渡った青はまるで海のように美しい。  青い目と視線が重なれば、カルヴィンの全身に熱が宿る。  すると思い出したのはクリフォード同様、自分も裸だったということだ。あまりにも美しく整った肉体を前にして貧弱な自分の躰を披露するのは恥ずかしすぎる。  カルヴィンは小さな悲鳴が漏れそうになるのを喉の奥に仕舞い込み、できるだけ目の前にいるこの完璧な男性に見られないよう躰を縮めて隠す。 「ここ、は――」  クリフォードがベッドから躰を起こせばほんの少しカルヴィンとの距離が生まれる。すぐ傍にあった熱が消え、ほんの少し寂しいと思ったのは気のせいだ。カルヴィンはクリフォードに気づかれないようそっと頭を振ってそう自分に言い聞かせた。  彼の声はとてもセクシーだ。  誰に言うでもなくぽつりと呟く声は低く、掠れている。その声はカルヴィンの躰の芯に熱を灯らせた。思わず呻いてしまいそうになる。必死に唇を閉ざし、おかしな声を上げてしまわないよう堪える。  いったい自分はどうしてしまったというのだろうか。  カルヴィンは動揺を隠せずにいた。目の前にいる肉体美の男性といるとどうやってもクリフォードに組み敷かれているありもしない光景を想像してしまうのだ。  声が掠れているのはあまりの高熱と激痛で呻っていたからであって、けっして情事の後ではない。それなのにおかしな気分になってしまうのはきっと自分が無防備な状況でいるからだ。

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