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Act Ⅲ Scene 6 : 美しいひと。 ⑥

 肌を見られることが恥ずかしかったのに、それさえも忘れてクリフォードにしがみつく。  ふたりの視線が重なる。彼の親指がカルヴィンの顎を固定した。  薄い唇から吐き出される吐息がカルヴィンの頬を掠める。カルヴィン自らも目を閉ざし、彼から与えられる口づけを待ち望んだ。  引き結んだ唇をそっと解く。  期待に胸が詰まる。閉ざした瞼も小さく震えた、その時だった。 「クリフォード、カルヴィン」  突然、外野から自分たちを呼ぶティムの声が聞こえてカルヴィンは慌てふためいた。喉から心臓が飛び出しそうになる。おかげでヒキガエルが潰れたような声が上がった。  そもそも自分はいったい何をしようとしていたのだろう。クリフォードから与えられる口づけを少女のように待ちわび、期待に胸を膨らませていただなんて!  ああ、どうしよう。ティムがやって来る。この姿ではクリフォードとの間に間違いがあったと勘繰られても仕方ない。なにせ今のカルヴィンはというと、一糸も纏わぬその躰にすべてのボタンを失った破れたチュニックをただ引っかけているだけという有様だ。そしてクリフォードにしても傷を受けた片方のみ包帯を巻いているだけで上半身は何も身に付けていない。唯一助かったと思うのは、クリフォードがズボンを穿いているということだけだ。  ――とはいえ、カルヴィンの下半身には身に纏うものが何もない。  いったい自分のズボンはどこにいってしまったのだろう。

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