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Act Ⅲ Scene 6 : 美しいひと。 ⑪
クリフォードもまた、バランのようにならないとは限らない。
カルヴィンは生きているから大丈夫だと言い張ったが、それはとんでもない愚かな間違いだ。クリフォードを他の誰よりも信用してはいけない。
それなのに、カルヴィン・ゲリーという青年は今もなお、こうやって無防備に身を預けてくる。
項垂れ眠っているカルヴィンの頬には麦畑のような艶やかな髪がひと房張り付いている。クリフォードは張り付いた髪をそっと撫でて耳へ引っかけてやると華奢な肩を抱き、揺れる馬車につられて倒れ込まないように支えた。
――どうやら世間から畏怖されている我らがボスはこの青年に惹かれているようだ。
今までどんな相手にも鉄仮面を貫き、笑顔のひとつさえ見せたことのない彼は今、思いやりに満ちた目でカルヴィンを見ている。
そして隣で無防備に眠る彼にしても――。カルヴィンは間違いなくボスに惹かれている。
しかし彼ら自身、自分の心情にはまだ気づいていない。気づいているのは自分だけのようだ。ティムは背後にいる青年とボスを一瞥 した後、にやりとした。
《Act Ⅲ Scene 6 : 美しいひと。 /完》
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