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Act Ⅲ Scene 7 : だから、貴方のせいじゃないですってば! ①

「目が覚めたか?」 「あ、はい」  いつの間に眠っていたのだろう。気が付けば馬車は屋敷の勝手口まで到着していた。  クリフォードの声で意識が覚醒したカルヴィンは何度か瞬きをした後、窓から外の景色を覗く。  雲ひとつない薄闇の空には点々と星が散っている。そんな小さな星々よりもいっそう明るさを増す三日月が、真上から少し傾いているのが見えた。  ――どうやら時刻は深夜少し過ぎたあたりらしい。  吐く息は白い。けれどもなぜだろう。少しも寒いとは思わなかった。  それもそのはず、カルヴィンの躰には上質なコートが被せられていた。それだけではない。視線を動かしたおかげで肩に回っている腕に気がついた。  どういうことか、クリフォードに包まれるようにして肩を抱かれている。  なんということだろう。回された腕の存在に今の今まで気づかなかったなんて!  マートに迫られた時は不快で仕方なかったのに、今はどうだろう。クリフォードに肩を抱かれても少しも不快とは思わない。これはいったいどういうことなのだろう。  いや、そうではない。それどころか、カルヴィンにとって肩に回された腕が当前のように思えているのだ。  カルヴィンは信じられない気持ちでいっぱいだった。そして同時にハンサムなクリフォードに女性のような扱いを受けている自分が恥ずかしくなった。  けれどもそういう自分も嫌ではない。むしろ彼には特別扱いされているようで、くすぐったい気持ちにもなる。それが余計に羞恥となり、カルヴィンの心を取り乱す。

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