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Act Ⅲ Scene 7 : だから、貴方のせいじゃないですってば! ②
恥ずかしくてたまらない。
カルヴィンはこの場に居たたまれなくなった。躰を起こせば、急に動いたのがいけなかったらしい。途端に視界はまた黒のモザイクに覆われてしまう。世界が傾いたと思えば、またもや力強い腕に支えられている。
(もうダメ。何も考えられない……)
カルヴィンは息を詰まらせてしまう。もうどうすることもできない。
腕の中で大人しく包まれていると、小言が聞こえてきた。
目眩を起こしたカルヴィンを見たクリフォードは、何やら小声で自分に悪態をついている。彼はカルヴィンの血を吸ったことをまだ気にしているらしい。
またもや自分を責めている彼を前にしてカルヴィンは違うと首を振った。
彼はそろそろカルヴィンの人権を尊重すべきだ。吸血されたカルヴィン本人が吸われても良かったと言っているのだ。いい加減、敬意を敬意として受け取ってもらいたい。
「クリフォード、ぼくが貧血を起こしたのは貴方のせいじゃない」
「いいや、君には明らかに栄養不足だ。それなのに血を抜き取るなんて許せるものじゃない」
カルヴィンが抗議したが、クリフォードは受け入れてくれない。
カルヴィンが首を振れば、クリフォードも首を振る。延々と繰り返される果てしない攻防が続く。
そんな二人の間に、突然あさっての方向から抗議の声が割って入ってきた。
「お二人さん、続きは屋敷の中でお願いできるかな?」
どうやらカルヴィンとクリフォードのやり取りをずっと聞いていたらしい。痺れを切らしたティムの言葉に、我に返ったカルヴィンはまた恥ずかしくなった。
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