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Act Ⅲ Scene 7 : だから、貴方のせいじゃないですってば! ④
そんなカルヴィンだが、クリフォードの様子が気になってしまうのもたしかだった。いくら自分は一日に必要な栄養を摂取していないとはいえ、成人した男子である。当然子供や女性とは違い、体重だって十分にある。そのカルヴィンを横抱きにして重くはないのかと考えてしまうのだ。
そっと彼の顔色を窺えば、相変わらず端正な顔立ちからは何も読み取れない。けっして細身ではないが筋肉質でもない体型なのにもかかわらず、こうして成人した男子であっても意図も簡単に抱え上げてしまうほど、クリフォードは男らしい。
実感すればする分、躰に灯った熱が上がる。
長い睫毛に覆われた青の目は屋敷から漏れる明かりを受けてはしばみ色のようにも見える。
以前は無表情で冷酷な伯爵だと思っていたのに、今はどうだろう。依然として高い鼻梁の下にある薄い唇はへの字に曲がっているのに、こうしてあらためて見ると唇は弧を描いているようにも見えなくはない。
クリフォードはまるで万華鏡のようだ。見方によって表情が変化する。
美しく雄々しい彼はずっと見ていても飽きない。いつの間にか彼の容姿に釘付けになっていた。
視線を感じたのだろう、クリフォードの視線がカルヴィンと重なる。
まさかクリフォードに見惚れていたとは言えないカルヴィンは慌てて視線を外した。
……ただ視線が合っただけ。それなのにいったい自分はどうしてしまったのだろう。早鐘を打つ心音はさらに大きく鼓動しているのは――。
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