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Act Ⅲ Scene 7 : だから、貴方のせいじゃないですってば! ⑤

 メイドたちはもう眠っているようだ。勝手口から屋敷の中に入れば所々壁に固定されているランプがほんのり廊下を照らしているものの、周囲はしんと静まり返り、視界が薄暗い。ただ、一階にある賭博クラブの会場は違う。煌々とした明かりが差し込み、紳士たちの軽やかに談笑する声が聞こえてくるばかりだ。まるで違う切り離された世界に、カルヴィンは夢心地でもあった。  従業員用の通路に壁に取り付けられている照明は深夜ということですべて点灯しておらず、かろうじて階段の段差がわかる程度だ。 「それでこれからどうするつもりだ?」  クリフォードがカルヴィンを抱えて階段を上って行く途中、ティムが後ろから訊ねた。カルヴィンはクリフォードがどこに向かうのかがなんとなくわかっていた。おそらくは二階にある、大きなグランドピアノがある一室に違いない。なにせカルヴィンはここに来てからというもの、ずっとあの部屋を使っていたのだから……。 「バランがぼくのことを死んだと思っているのならその方がいろいろと都合が良い。奴の目をくらませておいた方がいいだろう」  彼が話すたびに胸板が振動し、喉仏が上下に動く。彼はただ話しているだけ。呼吸しているだけなのに、ほんの些細なことでもカルヴィンの胸を振るわせる。  カルヴィンはおかしな声を出さないように必死に口を引き結ぶしかできない。 「懸命な判断だな。それならメイドたちには、主人は不在だということにしておこう。しばらくはカルヴィンと同じ部屋で過ごしてくれ。カルヴィンは主の大切な客人だ。――ともなれば部屋の中を不躾に嗅ぎ回る使用人もいないだろう。これでひとまずは怪しまれることもない。なに。別にどうということはないだろう? もともとあの部屋はクリフォード、君の部屋なんだから」

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