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Act Ⅲ Scene 7 : だから、貴方のせいじゃないですってば! ⑦

「……腹は?」 「えっ?」  何を話せばいいのかわからない。居たたまれない気持ちになりながらそわそわしてしまう。  唐突に訊ねられ、おかげでクリフォードの質問の内容がまったくわからなかった。おかげで間の抜けた声で返してしまう。 「腹は減ってないか?」  目の前に立つクリフォードは無表情に戻っている。もう少し言葉を付け加えた。今一度カルヴィンに訊ねる。 「いいえ」  言うが早いか、躰の方は雄弁だった。カルヴィンの腹の虫はすぐに癇癪を起こした。大きな音が室内を覆う。 「――っつ!」  ――恥ずかしい。両膝の上で握った手の平には若干の汗で湿っている。先ほどよりもずっと顔が赤くなっていくのが自分でも手に取るようにわかった。すぐ目の前でクツクツと笑う彼の声がカルヴィンの耳にさわる。  目の前のハンサムな彼に空腹を訴える腹の音を聞かれたと思えば恥ずかしさは増す一方だ。けれども普段、無愛想に決め込んだ彼はいったいどういうふうに笑うのだろうか。  クリフォードに興味を惹かれてしまう。伏せた目を上げれば、ふたりの視線が重なった。  ああ、どうしよう。クリフォードの視線が熱い。  クールな青の目に宿っているのは情熱の炎だろうか。クリフォードは間違いなくカルヴィンを欲している。食事の対象としてではなく、カルヴィンの肉体を――……。  そう考えればさらにカルヴィンの躰が熱くなる。口が開き、今度こそ喘ぎそうになった時――。

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