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Act Ⅲ Scene 7 : だから、貴方のせいじゃないですってば! ⑨
躰に触れたお湯が熱く感じる。てっきり外の凍てつく寒さに慣れていたと思ったのにどうやら違っていたらしい。あたたかな水温に慣らすよう、ゆっくり浴槽に浸かった。
するとちょうどのタイミングで浴室の外から声が掛かった。クリフォードがカルヴィンの着替えを持ってきてくれたらしい。けれども今のカルヴィンには冷静な判断が欠けていた。浴槽の中でいっそう身を縮め、小さな悲鳴が入り交じった声で返事を返してしまった。
本当に自分はどうかしてしまっている。
この身に何も纏っていない無防備な状態なのが原因なのか。はたまた冷酷な伯爵だと思い込んでいたクリフォードが実はとても思いやりに溢れた紳士だとわかったことが原因なのか。
たしかに、彼には不思議な魅力がある。傲慢で冷酷な伯爵かと思えば裏腹で、態度はずっと優しく、どんな紳士よりも紳士らしい。
カルヴィンを惹きつけて止まない青の目はとても美しい。冴えた瞳は凍てついた氷のようなのに、どこか純粋な水を思い起こさせる。目の奥に宿る炎は情熱的だ。君が欲しいと言われれば、同性でも頷いてしまいそうになる。
カルヴィンを惹きつけるのは目だけではない。高い鼻梁の下にある薄い唇だって魅力的だ。一度でも微笑する姿を目にしてしまえばたちまち虜になってしまうだろう。悪魔と戦い、激戦を繰り広げただろう肉体もまた美しい。しっとりとした触り心地の肌に自分にはない雄々しい躰。それに彼の後ろ姿――。きゅっと引き締まったヒップだってとてもセクシーだ。
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