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Act Ⅲ Scene 7 : だから、貴方のせいじゃないですってば! ⑪
これもクリフォードが作ったのだろうか。ヴァンパイアでありながらも人の食事を作っている様を想像して口元が緩んでしまう。気がつけば、先ほどの落胆する気持ちなんてどこかへ行ってしまった。
このボリッジも作り手の本人と同じくらい優しい味だった。柔らかいオートミール。人参やじゃがいもなどがたっぷり入った野菜はカルヴィンの体調を考えてくれていた。味付けもまたシンプルで、塩だけを使用しているようだ。食が細いカルヴィンでも容易に食べられるようにと計算されていることもすぐにわかった。
腹が満たされれば、自然とあたたかな感情が胸に広がる。
そんなカルヴィンの耳に届くのは、クリフォードがかけ湯をしている水音だ。暖炉ではぱちぱちと炎が揺れているがそんな頼りない音でかき消せるはずもない。
それもこれもここへ来る直前までクリフォードの肉体を見た所為だ。
おかげでおかしな想像をしてしまわないように思考を働かせるしかない。手持ち無沙汰になったカルヴィンはナイトテーブルの引き出しに手をかけた。中にあったのは、十通ほどの手紙だった。
差出人はどれも教会のもので、文字はお世辞にもけっして達筆とは言えない、年端もいかない子供たちからだった。内容は、クリフォードが贈ったお砂糖やおもちゃなど貰って嬉しかったことなど、子供らしい簡易的な文章であったが楽し気な様子が見て取れる。おそらくは何らかの事情で親をなくし、孤児を引き受けている教会へチャリティー品を贈った時のものだろう。
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