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Act Ⅲ Scene 9 : nightmare ②

 顔面は蒼白しているようにも見える。暖炉で消えかけている炎がさらにそうさせているのだろうか。全体的に陰を落とし、悲壮感を漂わせている。噛みしめた唇の隙間からは苦しげな声を発し、長い睫毛が斜を作り、目の下に影を落としている。閉じた目尻からは光る涙が次から次へと頬を伝い、流れ続けていた。 「カルヴィン?」  もう一度。今度はもう少しはっきりした声で彼の名を呼ぶ。しかし依然として反応はない。すすり泣く声が発せられるばかりだ。よほど恐ろしい夢を見ているに違いない彼は、自分の躰を抱きしめる両の腕に力が込められている。  どうにかして彼を悪夢から救わなければ――。  カルヴィンを悪夢から救い出す手立てを考えるよりも先に躰が動いた。  すすり泣くカルヴィンを背中からそっと包み込む。  恐怖に囚われた躰は冷たい。  カルヴィンはただちに夢から目を覚ます必要がある。  そして、静かに口を開いた。 「カルヴィン、しーっ、しーっ、大丈夫。大丈夫だよ、ラブ」  玉のようなじっとりとした汗が浮かぶ額に髪の毛が張り付いている。  クリフォードはそっと耳の後ろにかけてやりながら、旋毛に口づけを落とす。それから少しでも気持ちが落ち着くよう、彼の体温を上げるために部屋着の上から両腕を擦り続けた。  するとクリフォードの願いが通じたのか閉じていた瞼がそっと開き、翡翠色の目が姿を現した。  虚ろだった目はやがて光を宿し、クリフォードを写し込む。  ゆっくりと口が開く。 「ぼく、は……」  うなされていたからだろう。声は掠れていてうまく出ないようだ。

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