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Act Ⅲ Scene 9 : nightmare ③

「悪い夢でも見たのか? ひどくうなされていたよ、ラブ」  そう言った声音はクリフォード自身も驚くほど甘く、優しいものだ。 「シャーリーンが……姉さんがゴドフリーに殺される夢を見たんだ」  そしてカルヴィンは夢の内容を思い出したのだろう。また翡翠の目が潤み、涙が溜まっていく。  カルヴィンは顔を俯け、続けた。 「夢の中のシャーリーンはぼくに助けを求めていたんだ。だけどぼくはそこにいなくて……助けを求めて伸ばした手が少しずつ干からびていって……」  カルヴィンが泣いている。それなのに自分はなんと気が利かないのだろう。彼がこんなに苦しんでいるというのにクリフォードにはどう声をかけてやればいいのかわからない。自分の不甲斐なさに嫌気が差す。  俯くカルヴィンを反転させると引き寄せ、抱きしめた。  カルヴィンはふたたび口を開いた。  常に強気な翡翠の目は未だ光はなく虚ろなままだ。悪夢の続きを見ているのだろう。 「ぼくの両親は、ぼくが十一歳の時、流行病でこの世を去ったんだ。残されたぼくとシャーリーンは父方の親戚に引き取られた。叔父と叔母はとても優しくてぼくたちふたりを実の子以上に大切に育ててくれた。両親は亡くなり、姉さんとふたりきりになってしまったけれど、ぼくたちには叔父や叔母がいる。これから幸せになるんだって疑わなかった。だけど、シャーリーンは二度目の社交界の時。ゴドフリーと出会ってしまった……」  瞼を伏せれば溜まっていた一雫の涙が頬を滑り落ちる。  クリフォードは頬に流れる涙を親指で掬い取った。

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