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Act Ⅲ Scene 9 : nightmare ⑦

 クリフォードはいつだって孤独だったし、誰かに助けを求めることもなかった。  それが今はどうだろう。自分よりも百七十四歳以上も年下の青年に慰められるなんて――……。  クリフォードには誰かに慰められてもらった時の対応がわからない。口にこそ出さないものの、戸惑ってしまう。何を口にすればいいのかもわからず、カルヴィンの後頭部に手を回し、目を閉じる。 「――君はぼくに噛まれた。自分がヴァンパイアになったんじゃないかという心配はしないのか?」  しばらく続く沈黙の後、クリフォードがカルヴィンにそう訊ねたのは、父親から特異種(アンオーディナリー)へと姿を変えられた当初、クリフォードの心は散り散りに乱れた。だからてっきりカルヴィンも一般人種(オーディナリー)からヴァンパイアに変化することに対して恐れがあるのではないかと思ったのだ。 「ぼくは今までどおりの食事ができている。だからきっと大丈夫なんでしょう?」  冷静な判断だ。  クリフォードはカルヴィンの思慮深さに驚いた。 「――そうだ。そもそもぼくたちヴァンパイアはいわゆるウイルスに感染している状態なんだ。このウイルスは血中にこそ存在していてね。ぼくたちアンオーディナリーの血液を移し込まなければオーディナリーがヴァンパイアになることはない」 「だから姉さんはゴドフリーに噛まれても死に至るだけだったんだね」 「そういうことだ」  クリフォードは大きく頷いてみせた。  《Act Ⅲ Scene 9 : nightmare / 完》

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