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Act Ⅲ Scene 10 : 同じ気持ち? ②

 ゴドフリーといると心が弾み、何でもできる気分になったのだろうか。  ――けれどもゴドフリーはシャーリーンを幸せには導いてくれなかった。  彼にとってシャーリーンは自分の欲望を満たすだけの存在でしかなかったのだ。  だったら、クリフォードもそうなのだろうか。カルヴィンを抱いたのは、ただ隣にいたからで、欲望のはけ口として抱いただけにすぎないのだろうか。彼もまた、シャーリーンの命を奪ったゴドフリーのように、カルヴィンの躰に飽きたら無情にも簡単に切り捨てるつもりなのだろうか。  恋をした相手に手をかけられ、命を落としたシャーリーンを思うとあまりにも憐れで、あまりにも残酷だ。  姉の気持ちを考えれば胸が苦しい。  そして自分もまた、自覚してしまったこの恋が独りよがりなものだと思えば胸が引き裂かれるほどの痛みを感じる。  目頭が熱い。命を落としたシャーリーンのことやこの恋の結末を考えれば考えた分、涙が込み上げてくる。  唇が歪み、やがて涙は頬を滑り落ちる。  カルヴィンはたくましい胸板に縋り、嗚咽を漏らさないよう歯を食いしばって涙を隠す。するとカルヴィンを包み込む腕の力が強まった。 「泣かないでくれ。ぼくは君の涙に弱いんだ」  クリフォードはどうやらカルヴィンが泣いているのを察知したらしい。旋毛に薄い唇が触れる。彼が慰めてくれている。  果たしてカルヴィンという欲望のはけ口に対して慰める必要がどこにあるだろう。  暖炉の炎が小さく揺れている。カルヴィンが伏せた顔を上げれば、静寂を思わせる青の目と視線が重なった。

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