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Act Ⅲ Scene 11 : equal ②

 カルヴィンの言ったことがもし本当なのだとすれば、もはやクリフォードに勝機はない。  バランとクリフォードは種類が多少違うものの、ヴァンパイアには変わりない。淫魔(インキュバス)という力の差はあるが、それでもバランは自分が強いということを知っている。悔しいことにクリフォードも彼の力を認めざるを得ない。誰にも勝てない強固な強さが彼にはある。  しかし、である。  バランは自分の力に自惚れている。  だからこそ、奴の隙を突けば勝てると思っていた。たとえ、クリフォードの命と引き替えたとしても――。オーディナリーとしての命はすでに尽きている。死んだ自分の命で皆が平温に暮らせるのならそれでいいと思っているし、バランを倒すことこそ、クリフォードが特異種(アンオーディナリー)となってまで生かされた理由だと信じていた。  ヴァンパイアの自分はバランと対等であると疑わなかった。  それなのに――……。  太陽の下でも動ける彼をどうやって倒せばいいというのだろう。  いつだって目を閉じれば瞼の裏に写る光景がある。  忘れもしない九年前の出来事だ。  悲しみに揺れる瞳はやがて絶望に変わり、一切の光を失う。体内に廻るあらゆる水分が赤い牙に奪われ、干からびていく肉体。  為す術もなく目の前で息絶えていく様なんてもう二度と見たくはない。  腕の中にいるカルヴィンをそっと視界に入れれば、彼は甘い声を上げてクリフォードに擦り寄った。  普段、意志が強そうな凜とした光を宿す翡翠の目は閉じられ、クリフォードの腕の中で安心しきって眠る姿はとても可愛く、可憐に思える。  この彼がもし、彼の姉のように命を奪われるようなことになれば――

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