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Act Ⅲ Scene 12 : 気勢。⑤
ゴドフリーが社交パーティーを開くこととクリフォードが屋敷を出て行ったことと何が関係しているのだろうか。クリフォードはなぜ、声を荒げていたのだろう。
「クリフォードはなぜ、ぼくに何も言わずに去ったの?」
もう自分は用済みということだろうか。
涙が頬を伝う。
胸が痛い。
あまりの苦しさに呼吸できず、酸素を求めて口を開ければ、しゃくりが飛び出してしまった。
「カルヴィン、君が思っているようなことでクリフォードは去ったんじゃない」
ティムはまるで弟を慰めるようにカルヴィンの頭をそっと撫でた。
「彼は――君が大切なんだ。本人が思っている以上に」
(じゃあ、どうして何も言わずにいなくなるの?)
カルヴィンは首を左右に振り、ティムに違うと言いたかった。けれども口はしゃくりが飛び出すばかりだ。
「クリフォードはね、ひとりで決着を付けるつもりだ。だが、君も薄々勘づいているかもしれないが、クリフォードの躰はようやく毒が抜けた程度。まだ力は十二分に戻っていない。ただでさえ淫魔の吸血鬼 の力は強い。今のままで勝てる見込みなはない」
「そんな……」
「君はどうしたい?」
「そんなの、助けに行きたいに決まっています!」
この世界からクリフォードががいなくなるなんて考えたくもない。
「クリフォードを愛しているんだね」
「……はい」
今度こそ、カルヴィンは大きく頷いた。
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