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Act Ⅲ Scene 12 : 気勢。⑥

「だったら、おれも手を貸そう。君はきっと思いも寄らない結果をもたらすに違いないだろう。クリフォードにとっては殊更だ。さあ、そのために体力を付けておかないとな」 「でも! そんな悠長に構えていたらクリフォードが!」 「大丈夫。このままバランの懐に飛び込んだとしても勝てる見込みがないことはクリフォード自身も理解しているよ。そこまで愚かな真似はしない。ひとまず安心して良い」 「でも、ぼくは――ゴドフリーの狙いがぼくだとすれば、ここにいる皆さんにご迷惑がかかります!」  もし、万が一にでもカルヴィンがこの屋敷にいるとゴドフリーに知られでもしたら、この屋敷で働いている人々に危害が及ぶのではないか。  なにせゴドフリーは自分を欲している。この場所を嗅ぎつけ、襲ってくるのは目に見えている。  カルヴィンはもう誰の命も落としてほしくなかった。シャーリーンだけでたくさんだ。他の誰の死に目も見たくはない。  カルヴィンが話せば、ティムは静かに微笑んだ。 「ここはね、実は特異種(アンオーディナリー)が出入りしている賭博クラブでね。だからいくら淫魔でも彼は簡単に襲撃できない。君にとってここは一番の安全な場所だ。それと昨日の今日だ――」  ティムはそこまで言うと、にやりと笑う。 「夜通しクリフォードの相手をするのも大変だっただろう? 食事の用意をしてこよう」  立ち去り際に含みのある内容を言ってのけた。  やはりティムは昨夜、カルヴィンがクリフォードに抱かれたことを知っている。

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