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Act Ⅳ Scene 1 : 最後の決着をこの場所で。⑩

 クリフォード・ウォルターほどハンサムな男性はいない。  彼は淑女の姿をした彼女が実はカルヴィンだとは思ってもいないらしい。ただ口元に微笑を浮かべていた。――いや、それだけではない。窄めて微笑む青の目は、まるで愛しい何かを見るような、そんな視線を注いでいた。  彼は相手が女性なら誰にでもそうやって愛想を振りまくのだろうか。今や吐き気は治まっているものの、胸の痛みが強くなる。彼が自分から背を向けたのは、やはり女性が恋しくなったからなのだろうか。ほんの一週間前に自分を抱いておきながら平気で女性を口説いていることが悲しい。  それでも――。  彼を魅了しているのはこの会場にいる淑女たちではなく、間違いなくカルヴィンなのだ。  こうなったら夢から覚めるまで、彼が求める理想の淑女を演じてやろうか。  そう思うものの、しかしこの踵が高い靴では立っているだけでもやっとの状態だった。しかも、カルヴィンの運動神経は皆無に等しい。愛している相手とは踊りたいとは思っていても、自分ではクリフォードの評判を悪くするだけだ。  クリフォードにはただでさえおぞましい噂がついて回るのに、その上ダンスも踊れない無様な紳士という評価を与えたくない。好きな男性の評判を下げたくはない。だからカルヴィンは静かに首を振った。できるだけ不作法にならないよう、言葉を選び、嬉しい申し出を断る。 「わ、わたくしは。その、実はあまりダンスが得意ではなくて……」  どうやっても彼と自分とでは不相応なのだ。  この恋は間違っているとまざまざと思い知らされたカルヴィンは、泣きそうになった。それでも涙はこの場に似合わないと自分に言い聞かせ、どうにか堪える。

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