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Act Ⅳ Scene 1 : 最後の決着をこの場所で。⑪

「お恥ずかしながら、ぼくもなんです」  胸の痛みを隠しながら答えるカルヴィンに、彼はもう一度にっこりと微笑んで見せた。  その微笑みも美しい。  クリフォード・ウォルターがひとつも踊れないなんて絶対にない。  カルヴィンは彼が嘘をついていることはすぐにわかった。けれどもふたたび彼の微笑を見たとたん、悲しい気持ちも忘れて見惚れてしまった。  大きな口元にいっそうの笑みが広がる。カルヴィンは、まるで美しい花の蜜に吸い寄せられたミツバチのような気分になった。頭がぼうっとして霞がかかる。おかげでカルヴィンも手を伸ばし、大きな手のひらに乗せた。  カルヴィンには自分が何をしようとしているのか、この場所がどこなのか。今、何が起きようとしているのかを考えることができなくなっていた。  カルヴィンの思考は停止し、まるで白昼夢でも見ているかのような錯覚に陥る。  クリフォードは躊躇いもなく、カルヴィンを会場の中央に誘うと、他の貴族たちと合流した。  先ほどまではたしかにあった、むせ返るような香水の匂いも――。  目をくらませるほどの照明の数々も――。  耳を(つんざ)くほどの耳障りな音楽も――今ではすっかり消えている。  あんなに居心地が悪かった世界は、彼といると天国のように思えた。  頭上に飾られた豪華なシャンデリアから発せられる光の粒子はまるで彼を褒め称えるかのように降り注ぎ、包み込む。クリフォード自身が発光しているようにすら思えた。

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