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Act Ⅳ Scene 1 : 最後の決着をこの場所で。⑫
美しい音楽も煌びやかな照明も。すべては彼のためだけに存在しているかのようだ。
この場にある何もかもが彼の美を引き立てる。堕天使さながら美しさはさらに磨きがかかっていた。周囲を煌びやかな世界へと誘う。
シャンデリアから放たれる光の粒子は会場全体を覆い、眩いほどの光を放つ。
骨張った彼の手がカルヴィンの腰に添えられる。たったそれだけのことなのに、カルヴィンの心臓が大きく跳ねた。いや、それだけではない。躰のどこもかしこもが反応し、熱を持ちはじめる。彼と密接になるとこんなに従順になってしまうのか。胸がときめき、躰が歓喜に震える。おかげでカルヴィンは呼吸困難になってしまう。うまく息ができない始末だ。
けれどもそれは自分だけで彼は少しもそんな素振りはない。しれっと自分と向き合うこの男が憎々しい。彼を睨むために顔を上げれば、しかしカルヴィンは息を飲んだ。クリフォードが、まるで慈しむかのように自分を見下ろしていたからだ。満月のような瞳は穏やかで柔らかく、口元は弧を描き、こちらを見下ろしている。
なぜ、彼はそのような目で自分を見ているのだろう。ああ、クリフォードの視線から逃れられない。だってもう、ぼくは彼の虜だ。
カルヴィンが目を奪われている間にも、ふたりは音楽に合わせて軽やかなステップを踏んでいる。
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