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Act Ⅳ Scene 1 : 最後の決着をこの場所で。④

 ティムにはいったいどんな伝手があるのだろう。たしかに、彼はとてもハンサムだ。女性のドレスを手に入れることだって容易だろうし、況してや夜を共にする女性には困ることもないだろう。  だとすると、クリフォードだって――。  屋敷から離れて過ごすクリフォードが自分以外の絶世の美女と夜を共にしても少しもおかしくはない。  鏡に写ったカルヴィンの顔はみるみるうちにしかめっ面になっていく。  緊張を紛らわせるためにこのドレスの出所を考えただけなのに、思考はあらぬ方向に進んでしまう。どうやってもカルヴィンの心はクリフォードに辿り着くのだ。  周囲は深い闇が広がり、ふくろうが鳴いている。  さあ、支度はできた。カルヴィンは躰から飛び出すんじゃないかというくらいに大きく跳ね続ける心臓を落ち着かせるため、分厚い遮光カーテンを一気に開いた。窓を開けて大きく深呼吸する。赤い口紅を塗った口の端が自然とつり上がる。  ゴドフリーの屋敷に赴くのが怖いのか、それともクリフォードと会えるのが嬉しいのか。どちらがカルヴィンの胸を占めているのかはわからない。けれども胸が震える。もちろん膝や腰も。全身が戦慄(わなな)いている。頭痛はするし緊張で吐きそうだ。 「用意はできたかな?」  ティムがドアをノックする。  用意なんてできるはずがない。クリフォードと会うまでは永遠に!  カルヴィンは心の中で毒づいた。それから姉のシャーリーンによく似たドールを抱え、部屋を出る。もちろん、社交パーティーにこのドールが相応しくないことは知っている。

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