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Act Ⅳ Scene 1 : 最後の決着をこの場所で。③

 コルセットは着けていない。けれどもクリノリンは世の女性の大切な一部だ。女性として扮装するのならば必要になる代物だった。もちろん、踵が高すぎる靴も、だ。  今の自分は果たして女性に見えているのだろうか。  どんなにハードな運動をしても筋肉さえつかない華奢な躰には自信はあったが、胸の膨らみすらない自分では本物の女性には遠く及ばない。これではすぐに自分の正体がばれてしまうのではないか。  しかしカルヴィンは過去に一度、同じように女性に扮した時もあった。あの時も男だと疑われることはなかった。だったら今夜も大丈夫だろうか。  ――いや、あの時はエスコート役がいたから疑われずに済んだのかもしれない。  自惚れ屋のマート・トマス。二度と会いたくない相手だ。彼に何度も迫られたことを思い出したカルヴィンは顔を(しか)めた。  今回は会場の入口までティムがエスコートしてくれる手筈になっている。けれども屋敷内ではひとりきりだ。果たしてうまくこなせるだろうか。  もし、自分が男だとばれてしまえば世間では笑いものにされる。それどころか、バランにもあっさりと正体を見破られてしまい、自分は生きた屍と化すだろう。最悪なのはクリフォードとも会えず仕舞いに終わる可能性だ。  カルヴィンは舌で口紅を舐めないよう気を付けながら口の中に溜まった唾を飲み込むと、ドレスを撫でつけ、落ち着くよう自分に命じた。  子爵とは名ばかりのカルヴィンにはいうまでもなくドレスを買う余裕はない。このドレスもクリノリンもすべてティムの知り合いからの頂き物だった。

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