237 / 275

Act Ⅳ Scene 1 : 最後の決着をこの場所で。⑦

 たしかに、彼は滅多に笑わない。自分がどう思っているのかもなかなか打ち明けてはくれないし、気むずかし屋でもある。けれども内面はとても優しい、どんな貴族よりも紳士たる確固たる信念を持ち得ていた。  クリフォード。ぼくのヴァンパイア……。  目をつむればいつだってハンサムな男性の姿を思い浮かべることができる。カルヴィンは常に彼を求めているのだから。  カルヴィンは頭の中でクリフォード・ウォルターを思い浮かべた。指通りの良いシルクのような触り心地の豊かな漆黒の髪は後ろに撫でつけられ、髪型だけでも伯爵という地位を重んじているように思う。オリーブ色の美しい肌に骨張った輪郭。鷹のように鋭い目は研ぎ澄まされた青。高い鼻梁の下にある大きな唇。それだけじゃない。躰だって完璧で、思わず抱きつきたくなる分厚い胸板とスラックスを身に着けていてもわかる引き締まったヒップ。背の高いすらりとした長身の男性――。  本当にこの会場にクリフォードがいるのだろうか。  カルヴィンはふたたび目を開けた。天井に取り付けられている大小様々なシャンデリアが乱反射して白を基調とした壁面を照らす。あまりの眩しさに目がくらむ。そんなだからクリフォードを見つけるのは容易ではなかった。  しかし、この会場に集まっている貴婦人たちは違う。淑女たちはハンサムな紳士のハートを射止めようと必死だ。凛々しい公爵の心を射止めようと血走った目を向け、会場を食い入るように見つめる。そして彼女たちはお目当ての紳士に目をつけるのだ。胸元を大きく開いたドレスで女性らしさを強調したり、香水を匂わせて誘惑している。彼女たちの視線はすべて中央に向いていた。

ともだちにシェアしよう!