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Act Ⅳ Scene 2 : decisive battle ③

「くそっ、カルヴィンを離せ! インキュバス・ヴァンパイア!」  突然、強く切望していた男性の声を耳にしたカルヴィンは目を開けた。そこにはクリフォード・ウォルターがいた。彼は美しい淑女とダンスするよりもバランと対峙することを選び、カルヴィンを助けることを優先してくれた。  そればかりではない。彼はたった今カルヴィンの名を呼んだ。クリフォードは自分がカルヴィン・ゲリーだということを知っていた。けっして見知らぬ淑女をダンスに誘ったわけではなく、カルヴィンにダンスを申し込んだのだ。  ワルツを踊っていた時に向けられた、あの穏やかな青い目も、褒め称える言葉の数々も――すべてカルヴィンに告げたものだったのだ。  ――ああ、クリフォード。  カルヴィンの目に涙が込み上げてきた。やはり彼は自分が思っていたとおり、とても強い責任感と思いやりに満ちた男性だった。そして彼、クリフォード・ウォルターこそがこの生涯でたったひとり、愛した男性なのだ。 「誰かと思えばまたお前か。貴様は餌の食べ残しに付きまとうハイエナのようだな。実に目障りだ。彼を仲間にして貴様を殺すよう仕向けてやろうか」  カルヴィンは、たとえバランの操り人形になっても彼の言うとおりに動かない自信はあった。だって愛している彼の命を奪うなんて考えられないことだ。バランの下でも抗って、抗って、抗い続けてやる。 「クリフォード、ぼくのことはもういいんだ。逃げて……」  どうか生きてほしい。カルヴィンは涙を飲み込み、静かに目を閉じた。彼の血なまぐさい息が頬を掠める。目を閉じていても鋭い牙が頚動脈(けいどうみゃく)に狙いを定めるのがわかった。

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