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Act Ⅳ Scene 2 : decisive battle ⑤
バランはカルヴィンの血液の味に変化があったのが許せなかった。インキュバス・ヴァンパイアは純潔の血が何よりも好物だった。男の欲望も、躰も、まだ何も知らない処女の血は甘く馨 しい、自分を興奮させる味を求めていた。しかしどうだろう。カルヴィンの血液には新鮮さを感じなかった。答えは明白だ。この目の前にいるヴァンパイアがカルヴィン・ゲリーの純潔を奪ったのだ。
バラン・ド・ゴドフリーは憎々しげに鮮血に染まった唇を歪めた。
「残念だったな。彼はすでにぼくの縄張りにある」
薄い唇が弧を描く。その微笑すらも美しい。クリフォードは地面に転がったドールを素早く拾い上げるとカルヴィンに渡した。それから懐から短剣を取り出し、バランに攻撃を繰り出した。
しかし相手の方がスピードが上だった。短剣による突きの攻撃はことごとく避けられる。それでも食らいつき、クリフォードが素早い蹴りを繰り出せばブーツの踵に仕込んでいたナイフが飛び出し、彼の肉を裂いた。自慢の肉体を傷つけられ、怒りを露わにしたバランは強烈な蹴りをクリフォードのみぞおちに放った。彼の一撃は、けれどもクリフォードに絶大なダメージを与えた。
クリフォードはなんとか体勢を立て直してバランから遠ざかるものの、その場に蹲ってしまった。クリフォードの血液が口から飛び散る。
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