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Act Ⅳ Scene 3 : 理性と感情のはざまで。⑤
カルヴィンは苛立った。カルヴィンがどんなに説得力のある説明をしても、けっして彼の返事は変わらないだろう。クリフォードはなんてわからず屋で意地っ張りなんだろう!
けれどもそれだけではないことはカルヴィンがよく知っている。クリフォードは寛容な紳士でもあった。彼自身を嫌っている相手に対しても優しく見守り、けっして見放さない忍耐強い精神と、冷静な判断を怠らない。溢れ出る欲望を強靱な理性で抑え込み、血に飢えたヴァンパイアの本能ですら打ち負かしてしまう。だからこそ、彼は今もなお伯爵という地位を維持できている。屋敷で働く人々や広大な領地に住まう人々の生活を守り抜いている。それ故に、カルヴィンは彼に恋をした。抱きしめてくれる力強い腕と、大きな彼自身という存在に――。けれども今に至っては欲望を押さえ込むだけの強靱な理性なんてものは不要の長物にすぎない。カルヴィンが求めているのはどんなに大きな氷でも溶かせる熱い心と、そして自分を愛してくれているという証だけだ。
カルヴィンは彼の腕の中で伸びをすると、隙間を埋めるようにぴったりと躰を密着させた。ほんの少しお尻に力を入れて身動いでみる。そうして気が付いたのは、とても座り心地が悪いという事実だ。カルヴィンのお尻の下では彼自身が張り詰め、ズボンが形取っていた。クリフォードは間違いなく自分を欲している。それはカルヴィンにとっても喜ばしいことだ。だって自分も同じ状態にあるのだから。
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