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Act Ⅳ Scene 3 : 理性と感情のはざまで。⑦
カルヴィンは苛立った。自分が思っていた以上にチュニックのボタンが多い。ひとつ外すのに長い時間がかかってしまうのだ。それでもどうにかふたつ目のボタンを外せば、まるで彫刻でできた美術品のような象牙色をした肉体が覗く。
カルヴィンは唇を彼の引き締まった胸郭に乗せ、吸い上げた。同時に口内にしょっぱい汗と鉄のような味がした。そっと息を吸い込めば、オークモスの、雨の雫を含んだ草と土の香りがする。大きく腰を動かし、お尻にある固くなった彼を感じた。それから両腕を彼の背中に腕を回す。
すると彼は短いうなり声を上げた。大きな骨張った指が赤い布地を通り、剥き出しになっている臀部を包み込んだ。カルヴィンを魅了して止まない青い目が瞼から姿を現す。欲望の炎を宿した青い目が見下ろしている。まるで彼の目の中に自分の姿が写るのではないかと思うくらい、その眼差しはとても強い。
「なぜ君は薄い布地しか身に着けていないんだ」
その声はとても掠れている。クリフォードの抗議する声がカルヴィンの耳孔に落ちてきた。
カルヴィンは小さく鼻で笑うとたくましい彼の肩に頭を乗せた。それはクリフォードが降参した瞬間だった。
《Act Ⅳ Scene 3 : 理性と感情のはざまで。/完》
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