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epilog ①
カルヴィンは目覚めると、う~んとひとつ大きく背伸びをしした。こんなに心地好い安らぎを感じたのは何年ぶりだろうか。傍らにいるはずのハンサムな男性に向かって手を伸ばせば、しかし両手は空を掴む。
クリフォードがいない。キングサイズのベッドをひとり占領していることに気がついたカルヴィンは頭上に置いてある懐中時計に目を凝らした。あたたかな暖炉の炎が視界を照らす。時刻は深夜になろうとしていた。おそらくこの時間は一階の賭博クラブで指揮を取っているだろう。
カルヴィンはクリフォードのぬくもりを求めてベッドから身を起こした。滑らかなシルクのシーツがさらりと柔肌を撫でる。視線を下ろせば一糸も纏わない無防備な姿だった。躰のいたる部分に愛撫の痕跡が散っている。これは彼に求められた証しだ。カルヴィンはくすりと笑った。ハンサムな男性を誘惑している自分が誇らしく思えてくる。
等身大の鏡の前にそっと身を乗り出せば、以前よりもずっと生き生きとした顔の青年が立っている。日焼け知らずの肌は以前にも増して瑞々しく、真珠のように光輝いているように思える。ヴァンパイアとして生まれ変わったカルヴィンの躰は軽く、見るものすべてが鮮やかな色彩を持っていた。
クリフォードはヴァンパイアになってもいいことはないと言っていたが、そんなのは嘘だ。だって愛しい彼の傍らにいられるのだ。カルヴィンはナイトテーブルのすぐ側に置いてある籐椅子からチュニックを羽織り、それから下着とブラウンのズボンを足に通して愛する彼がいる一階に下りた。
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