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epilog②

 賭博クラブを開いている一階の広間は相変わらず賑やかだ。光輝くシャンデリアが広間を包み、その下では紳士たちが談笑している。  クリフォードに勝る紳士はまずいない。だから周囲がどれほど混雑していようがカルヴィンは一向に困らない。ハンサムで威厳たっぷりなクリフォードの姿を探すのに時間はかからなかった。中央でシルバーブロンドの男性と話している彼の姿を見つけた。今夜の彼も完璧だ。たっぷりとした漆黒の髪は後ろに撫でつけられ、ダークブラウンのスーツが象牙色の肌を浮かび上がらせる。分厚い胸板と男らしい広い肩幅。それにすらりと伸びた長い足。ぴんと伸びた背筋が意志の強さを物語る。どんな紳士にも敵わない絶対的存在感。  彼がぼくの運命の人だ――。  カルヴィンはあまりにもハンサムで美しい男性に釘付け状態だ。唇から甘いため息がこぼれる。入口に立ち尽くし、見惚れていると、彼はこちら側に気がついた。視線が絡み合ったかと思えば、先ほど話していた紳士から離れ、長い足が人混みを縫うようにしてこちらへ向かってくる。 「もう少し休んだ方が良い」  あっという間にカルヴィンの元へ辿り着いた彼は心配そうに翡翠色の目を覗き込む。青い目がカルヴィンを労るような目で見つめている。彼がそう言ったのは、ベッドの上で休む間もなく太陽が昇っている以外、一日の大半が彼に抱かれ、過ごしているからだ。なにせ自分の食事は一般人種(オーディナリー)だった頃とは違う。

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