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epilog③
ヴァンパイアは血液を求める。クリフォードは自らの血をカルヴィンに与え続ける。なにせ吸血はオーディナリーが子を育む行為と同じものだ。そうなれば熱に浮かされたカルヴィンはクリフォードを求めてしまうし、血を吸われたクリフォードもまたカルヴィンを欲する。抑えきれないふたりの欲望が互いを求める。
引き締まった男性的な裸体。カルヴィンを求める薄い唇。カルヴィンはクリフォードとの情交を思い出し、頬を薔薇色に染めた。たしかにクリフォードの言うとおり躰は怠い。けれども以前と比べると躰に羽根が生えているのではないかというくらい軽いのだ。だからカルヴィンは大丈夫だと口にする。
けれども彼は首を横に振った。クリフォードはとても心配性だ。
「あのね、クリフォード……」
彼に抗議するためふたたび口を開いた――瞬間。カルヴィンの躰が宙に浮き、囚われた。突然横抱きにされたカルヴィンは小さな声を上げる。
「みんなに見られます!」
恥ずかしさからそう口にしたものの、それでも彼の側に居たいというのは変わりない。だから彼の首に腕を回す。クリフォードは不機嫌そうにふんと鼻を鳴らした。
「見せつければいい。奴らは君を惑わそうとするのだから――」
それは昨日のことだ。この賭博クラブでカルヴィンもクリフォードの手伝いを申し出てグラスや果物を持ち運ぶ時、ひとりの男がカルヴィンの躰をいやらしい目つきでなぞったのだ。彼はそれを未だに根に持っている。
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