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♥7.好きなら回れ右をしろ(14)

 いつの間にか優駿のペースに巻き込まれている。それが気に入らないと思うのに、一方ではそれを悪くないと感じている自分も否定できない。鬱陶しくて面倒だと思う反面、なんだか擽ったいような、気恥ずかしいような、落ち着かないのに嫌じゃないという、何とも言えない気分になっていた。 「続けても、いいですか……?」  困惑している宰の顔を覗き込み、優駿は返事を待たずに再開する。 (まだいいって言ってねぇのに)  今更ノーと言うはずもないと、ばれているのだろうか。宰のものを纏った指が、そっと下へと伸ばされる。濡れた中心の根本から、滴りの跡を辿るように会陰をなぞり、狭間を割って窪みへと到達する動きに、躊躇う様子は一切なかった。  正直、宰は驚いていた。 (こいつ……ホントに男初めてか……?)  布越しに感じる質量からも、優駿が一度も萎えていないのは知っていた。萎えるどころか、どんどん張り詰めて行くのが嫌でも伝わってくるくらいだった。  しかし、先刻、宰の放ったものを舐めようとしたことといい、それ以外でもまったく迷う素振りを見せないことといい――。今更ながら、本当に同性との経験はないのだろうかと疑ってしまいそうになる。 「お前、今までに……男、相手にしたことって……」 「ないです。美鳥さんが初めてです」  優駿が男を相手にしたことがあるかなんて、確かめるまでもないと思っていた。そしてやはり優駿は「ない」と答えた。  宰は軽く混乱した。 「ま、待て……、それなら、お前、やりかた――」  優駿の肩を軽く掴み、改めてその顔色を窺う。  するとややして、優駿は「ああ」とはにかむように笑った。 「嘘じゃないですよ。その、俺……、勉強、したんです。やりかた――」 (何もしませんって言ってたくせにかよっ)  宰は思わず心の中で突っ込んだ。 (ああ、そうか……こいつ、勉強だけは出来るんだった……)  思い出すと、確かに合点がいった。不本意ながらも、納得はできた。何だか妙に負けた気になっているのが、釈然としないけれど。 「美鳥さんって、やっぱり綺麗ですね」 (何が綺麗だよ……)  そんな宰の胸中などどこ吹く風で、優駿はうっとりと囁いてくる。「綺麗です」と何度も囁きながら、宰の目尻に唇で触れ、かと思えば隙を突くように、表層を撫でていただけの指を体内へと潜り込ませてきた。 「ぃ、ぁあっ……っ」  おかげで宰は、予定外に高い声を上げてしまう。 「お、前……っ、ぁ、そん、なっ……、んぁっ……っ」  抗議しようにも、まともに言葉は紡げない。差し入れられた指先が、更に奥へと埋められていく。宰が背を反らせると、一層掻き乱すように内壁を擦られた。

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