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♥7.好きなら回れ右をしろ(15)

「や……っあ、……ま、待っ――…」  見る間に目許が熱くなり、生理的な涙が込み上げてくる。宰は必死に首を振り、ちょっと待てと必死に訴えた。そうしなければ、すぐにも達してしまいそうだった。さっきの今で、それこそまだ指を一本入れられただけだと言うのに。 「も、いい……っ、いいから…っ……」  情欲に濡れた眼差しで、せがむように優駿を見る。優駿は息を呑み、そのくせ「でもっ」と首を振った。 「だってまだ無理ですよね? 俺、美鳥さんを傷つけたくな……」 「いいから来いよっ……、こっちはお前と違って慣れてるんだから、それくらいで――」  切羽詰まって口走った言葉に、優駿が傷ついたような顔をする。  宰はしまったと思いながらも、謝ることはなくただ優駿の頬に両手で触れた。 「今はお前のことしか考えてねぇよ。――お前が欲しいんだよ。少々痛ぇとかそんなの、マジどうでもいいくらい、今はお前だけが欲しくて、もう……」  どうにかなりそうなんだよ。  口付けるように顔を近づけ、口付けるように唇を開く。そしていまにも重なりそうなそこに、吐息ごと注ぎ込むように囁いた。 「だから、……来いよ」 「美、鳥……さん」 「――優駿」  間近の瞳を見つめて、名を呼んだ。 「美鳥、さ……っ」  呼び返されて、少しだけ微笑むと、優駿は噛みつくように口付けてきた。  唱えるように「美鳥さん」と何度も口にしながら、唇をより深い角度で重ね、急くように舌を絡める傍ら、宰の中で動かしていた指をゆっくりと引き抜いていく。 「そ、んな風に言われたら、俺っ……」 「んっ……大丈夫、だから……っ早く」  指の圧迫感が無くなると、ほとんど無意識に先を強請った。覆い被さるその身に腕を回し、身体でも促すように腰をすり寄せる。  優駿は駆り立てられるように衣服をくつろげた。 「ごめんなさい、俺、もうっ……」  抱えるように足を曲げられ、左右に広げられる。僅かに浮いたその中心に、痛々しいほど張り詰めた先端があてがわれた。宰は努めて身体から力を抜いた。 「ぃ――っぁ、あぁっ……!」  明らかに準備不足の身体を、優駿の屹立が貫いていく。慣れているとは言ったものの、実際にはしばらく色事から遠ざかっていた身体を、性急に開かれていくのは思ったよりもきつかった。  けれども、そんな苦痛も今は苦痛とは感じない。確実に気のせいとは言えない痛みがあるのに、それもどこか心地良いとすら感じていた。  気持ちが伴っているからだろうか。優駿の想いがまっすぐに伝わってくるからだろうか。  これまで自分が他の相手としてきたことは何だったのかと思うほど、優駿が傍にいるだけで、苦しさよりも安らぎの方が上回る。どうしようもなく心が震えて、身体が芯から熱くなる。 「美鳥さ……っ、美鳥さんっ……!」  狭い中を、どうにか最後まで収めきった優駿は、箍が外れたように腰を打ち付けてきた。 「んぁ…っ、あっ、深……っ、待っ、ぁあ……っ」  視軸がぶれるほど激しく揺さぶられては、こぼれる声も抑えきれない。口端から唾液が伝い落ちても、唇を噛むことさえできなかった。

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