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第5話

 李がバー・マッカーシーで出会った男。  彼の名前は黒木慶喜(くろきよしのぶ)。  と言っても、わざわざガルビーノJr.が部下を使って、調べるまでもなく、最近、ビッグアップルで幅を利かせている日本人の起業家は嫌でも目なり、耳なりへ入ってくる。  しかも、30そこそこで、顔立ちが良ければ、さらに羨望やら妬みやらで良くも悪くも目立っていた。 「日本人は童顔だと言うが、俺よりも5つも上とは……」  李と黒木が出会った日、25歳の誕生日を迎えた李は黒木を10代は若すぎるから21か22だと思っていたのだが、まさか、自分の方が年下とは思っていなかった。 「しかも、ソフィアの代表取締役って嫌味にもなんねぇ」  ソフィアとは日系の企業ながらここビッグアップルでも有名になりつつある大企業だ。  ガルビーノJr.が言う通り、嫌味を通り越して、三文芝居のシナリオのようだった。  だが…… 「まぁ、良い。俺もあいつもあのバーでは何者でもねぇんだから」  ガルビーノJr.が李にすらならない夜、バー・マッカーシーには美味いバーボンと黒木がいた。

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