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第6話
いらっしゃい、という意味合いのバーテンダーの声の後、
「2ヶ月振り……といったところでしょうか? 貴方とお会いするのは」
と、最初に声をかけたのは黒木慶喜の方で、ガルビーノJr.はにやりと笑う。
「なに? 俺に会いてかったってか?」
ガルビーノJr.こと李龍は今まで女にもそんな風に語りかけることはそんな風に語りかけることは少なかった。
李龍の腕には常に何人も美女がいたが、本当に心にいた1人だけだった。
「ははは……えぇ、実はあれから何度か、このバーには来ていたんです。けど……」
「けど?」
「貴方がいない夜はつまらないものだった」
「俺がいねぇのはつまらねぇ……か。ふっ、なかなかあちぃ口説き文句だ」
李龍は慶喜と同じ酒をバーテンダーに注文する。酒はあの日と同じ銘柄のバーボンで、バーテンダーは無駄のない動きでグラスに酒を注いだ。
「さて、今日は何について話しましょうか?」
李龍が慶喜のグラスに自身の分のグラスを軽くぶつけると、慶喜は笑う。
名前でさえも無粋だと言い、名乗らなかった。黒木にも名乗らせなかった。
お互い、何者であるかさえも伏せて、この地では話す者も理解する者もいない遠い国の言葉で話す。
「そうだなぁ……」
李龍は呟くと、一口、酒を飲む。
特別で、濃密な時間が始まる。
「そうだ。貴方は恋をしたことはありますか?」
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