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第9話

「今日はもう来ない、か……」  今日の分の仕事が終わり、李龍はバー・マッカーシーへ向かった。  そして、ゆっくりとしたペースで酒を飲んでいく。  特に慶喜へ言いたいことがある訳ではない。ただ、無性に慶喜に会いたくなったのだ。 「まぁ、用意とか色々、あるだろうしな……」  慶喜が結婚するのはシャーロット嬢が18歳になる日。  まだ1年と半年先だが、2年もない。  それに、オフェット家はただの資産家ではない。この国、いや、世界の資産家ランキングでも常に上位に位置している。準備も入念に行われるだろうし、披露宴は歴史上から見ても、盛大で豪華なものになるのも予想がつく。 「A refill.(ああ、もらう)」  バーテンダーの勧めるままに酒を飲んでいく。  李龍の飲み方は非常に静かで、やけ酒のような荒っぽさはない。  純度の高いバーボン。咽喉が焼けつきそうなのに、それ以上に胸が焼けついて、焦げていくような感覚が李龍を攻め立てる。  そして、李龍はある人の名前を呟いた。

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