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第11話

 1960年の2月のある日。  1960年代のビッグアップルは内部対立は日常茶飯事だったが、マフィア全盛期だった。  そんなビッグアップルのきってのマフィアのボス……メルキオール・ガルビーノJr.も自身の執務室で配下の構成員のレスターから銃口を向けられていた。 「 I hate to say it but you're not suitable for a boss.(悪いけど、貴方はボスの器ではない)」  メルキオール・ガルビーノJr.はビッグアップルの中でも特に力を持つマフィアのボスの1人であることを抜きにしても、非常に先見性のある男で、あと15年もこのマフィアにとっての全盛期が続くとは考えていなかった。  そんな男は血の繋がりがあるなしに関わらず、バルタザールとカスパールという息子とロージーという娘を自分の子として既に認知していたが、彼らを跡目にしないと公言していた。  そして、その跡目にはこれから自分の子として認知するだろう子や配下の優秀な構成員も例外なく置かず、あと10数年もすれば、ガルビーノファミリーも解体する予定だと宣言したのだ。  当然、レスターのように配下の構成員で腕に覚えがある者は失望し、次に自分こそがボスの座に相応しいと思い始める。 「Exactly. Both me and you.(確かにな。俺もお前もそんな器ではねぇだろうさ)」  2つある器のうち、出来の良くない方の器が割れるように。  ガルビーノJr.が素早く放った1発の銃弾でレスターは倒れる。額が銃弾を貫通し、床は血の赤い色が広がっていく。 「R.I.P. Les.(静かに眠れよ、レス)」  ガルビーノJr.はまるで自身の指のように冷たい銃を扱うと、既に息のないレスターに近づき、目を閉じる。  何の返答もない静かな死。即死だった。  すると、メルキオール・ガルビーノJr.はどこかへ電話をかけた。 「あー、ケン? すぐに来られるか? 仕事を頼みてぇんだ」

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