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第13話
1960年2月14日。
ガルビーノJr.こと李龍は娘のロージーと彼女の母親・ヴァイオレットの元を御忍びで訪れていた。
「Happy Valentine's day, my princesses.(ハッピーヴァレンタインデー、お姫様達)」
ガルビーノJr.は被っていた真っ白なボルサリーノをとり、会釈する。ロージーとヴァイオレットの手の甲にキスを贈ると、バラの花束を手渡した。
「Dad, I love you! I'm your valentine.(お父さん、大好き! 私はお父さんのヴァレンタインだよ)」
「Oi you!(こら、ロージー!)」
ロージーはガルビーノJr.から渡された1輪のバラを持って、慎ましいながら綺麗に整えられた庭を駆け回る。この1月に7歳になったばかりの娘なのだが、日に日に可愛らしくも、おしゃまになっていくとヴァイオレットは言う。
「I'm so sorry, Don. She loves...(ごめんなさい、ドン。あの子、貴方のこと……)」
実はヴァイオレットは正妻ではなく、彼女の娘であるロージーもガルビーノJr.との子ではなく、彼女の前夫との子だった。
彼女の前夫はマフィアではなく、一般人だったのだが、ガルビーノとポモドーロ間の抗争の時にガルビーノ配下の構成員が放った流れ弾に当たって、息を引き取った。
一般人を巻き込むのを良しとしないガルビーノJ r.は多額の見舞金を用意して、ヴァイオレットの家を訪れたが、彼女はお礼を言いつつも、受け取りを拒否した。
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