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第14話

『He was also bad. Saying that there is good profit story.(あの人も悪かったのです。良い儲け話があるとか言って……)』  ガルビーノJr.の正妻・ダリアはバルタザールとカスパールという2人の息子を何よりも思う良き母ではあるのだが、派手なことや楽しいことが好きな女だった。それに対して、ヴァイオレットは貧しく控えめながらも、惨めさがない女だった。  清貧さに毅然としたものさえがある女だった。  ガルビーノJr.はヴァイオレットに断られてからも何回か、見舞金を持って訪れるうちに、ヴァイオレットの娘・ロージーに懐かれ、疑似家族のようになっていた。 『Dad!(パパ!)』  そして、ロージーはガルビーノJr.がマフィアであること、実の父親ではないことを知らなかった。 「What the hell, Letty? You two are my princesses. It's important, It's very important.(何、言ってんだ、レティ? 君達は俺のお姫様なんだ。とても大切な、大切なね)」  マフィアの情婦にして、傾国の美女だった多嘉子。  マフィアの名門であるセイロン家出身の令嬢で、華やかなダリア。  マフィアとは縁もゆかりもない清貧な女性であるヴァイオレットと可愛らしくおしゃまな小さな娘のロージー。  今までガルビーノJr.は何人かの女性に出逢ってきた。  またレスターを始め、非常に腕のある構成員や同じ孤児院で育ち、構成員の治療や死亡診断書を用意する石田謙太郎、血を分けた実の息子達であるバルタザールとカスパール等、たくさんの男性にも出逢ってきた。  前ガルビーノファミリーの初代のメルキオール・ガルビーノもそのうちの1人で、李龍ことガルビーノJr.は世界にいる息子の中で最も彼に似た男だったと言う。  ただ、ガルビーノJr.にはそんな彼女ら、彼らを差し置いても、特別な存在がいた。 「黒木慶喜……」  ビッグアップルの場末のバーで、神様の気まぐれのように2、3度、会えただけの男。  だが、ガルビーノJr.……李龍の心を深く捕らえ続ける男だった。

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