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第20話

「I feel bad...happy day(悪りぃな、めでてぇ日に……)」  ベリーニから李龍は酒を受け取ると、李龍は酒をカッと飲み干す。  マッカーシーとは違い、100人はゆったりと夜を過ごせる広い店内にも李龍とベリーニ以外には誰もいない。というのも、元・部下であり、現・ホテルのオーナーのカールトンの気遣いだった。  だが、李龍とベリーニだけの空間には2人の人物が入ってきた。 「Sur, I feel bad, but...(大変申し訳ありませんが……)」  ベリーニはいつだったか、マッカーシーでしていたそんな断り文句を口にする。  が、ベリーニの言葉がそれ以上、続くことはなかった。  不審に思った李龍が2人の人物の方を見ると、1人は元・部下で現・ホテルのオーナーの男、トム・カールトンだ。 「Tommy...?(トミー……?)」  今でこそ立派なネイビーのダブルスーツに身を包み、3つ星ホテルのオーナー然としていたが、ガルビーノ家に来た頃は靴も満足に履いていなくて、痩せこけた少年だった。  そして、もう1人は今や、このビッグアップルでは敵なしと謳われる日系の実業家だった。 「お久し振りですね。ジョゼフ・コリンズさん……いや、それは貴方の本当の名前ではないんでしょうけど」  皮肉そうに笑う男、それは誰あろう黒木慶喜だった。

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