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第21話
I always decided where I wanted to go.
(いつも行きたい場所は自分で決めてきた)
However, it must have been considerably weakened.
(ただ、相当弱っていたのだろう)
To the extext that I go to a land I don't know to play with someone.
(誰かと戯れに知らない土地に行く程度には)
Both me and this guy...
(俺もこの男も……)
「まさか、こんなところにいるなんて思いもしなかった」
李龍は何故か、イタリアの炎天下の中、馬車に乗っていた。
いつものブランのスーツよりは薄手の麻製のスーツを着ている。そして、李龍の隣には同じく麻でできたベージュのスーツを着た黒木慶喜が座っていた。
「ええ、僕もまさか、貴方とこんなところにいるなんて思わなかったです。あのメッセージを受け取った日には」
慶喜が言うあのメッセージというのは慶喜がオフェット嬢と結婚した時に受け取ったものだ。
白い薔薇に埋もれたメッセージカードには祝いの言葉は一切書いてなく、ただ宛名と差出人名が書かれている。
もう10年以上も前のことだが、慶喜は今でも白い薔薇の香りも差出人名を見た時の思いを忘れられなかった。
「マッカーシーの恋人……確かに貴方を指すには1番しっくりくる名前です。ジョゼフ・コリンズ氏やチャールズ・マルティーニ氏なんかよりは、ね」
慶喜が皮肉のように呟いた名前は李龍が堅気になった時につけた偽名だった。と言っても、やっていることはガルビーノ家にいた頃とはあまり変わりない。
金の運用、人の動かし方、街での振る舞い。その全てを情報を巧みに使い、意のまま、思った通りにする。
だが、かつての気を許していたロージー・マイヤーズや石田謙太郎(ケネス・マイヤーズ)が不慮の出来事から帰らぬ人になると、途端にやるせない気持ちになっていた。
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